その後に映画も見てみた。本の中で僕が描いたものと映画とはずいぶんかけ離れた
ものでしかなかった。
村上春樹が過ごした西宮の夙川、同じ町で彼の10年後に僕もそこで暮らしていた。
1970年の神戸を舞台にしているが、別に神戸を感じろなんて本ではなく、取り立てる程のストーリーもない。
そこにあったのは、20歳の頃の、そう学生時代自分も良く遭遇したあの感覚だった。
“沈黙に潜む会話”とでも言うか、当時の学生は男同士でも男女でも今のように
春のひばりのごとくぴーちくぱーちくした会話をしなかった。
ボソッと意味ありげな一言、やたらと長い時間の沈黙。その後に発する意味不明な
一言。色んなことを抱えて尚且つ多くを語らず見たいな時期。
お互いを知りすぎない、それがカッコいいとか思ってたのかもれない。
とても懐かしい気分に浸れた一冊。そこにはいつも音楽があったのも確かです。